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航空技術が進歩した現在でも,失速やスピンといった危険な状況をパイロットが事前に察知し,致命的な事故を回避するのは依然として難しい課題です.しかし,Wolfram言語,携帯型コンピュータとセンサーモジュール,そして数回の大胆な試験飛行の助けを借りて,Mike Foale氏と娘のJennaさんは「Solar Pilot Guard(SPG)」を開発しました.これは早期警告を発して命を救う支援を行う,仮想副操縦士として機能する統合型プローブです.
Foale氏は,複雑な飛行問題を解決するためにWolfram言語を使うことについて,少し心得があります.宇宙物理学者でありNASAの宇宙飛行士として,1年以上の宇宙滞在経験を持つFoale氏は,無人補給シャトルとの衝突があった際,ミール宇宙ステーションにいました.彼はMathematicaを用いてステーションの姿勢制御喪失問題を解決し,宇宙からWolframの技術サポートに連絡を取った唯一の人物(これまでのところ)という称号を得ました.
そのため,Experimental Aircraft Association(EAA)が航空機の制御喪失の差し迫った問題を解決するためのコンペティションを発表した際,Foale氏は即座にWolfram言語を思い浮かべました.
Foale氏のアイデアは,「in-family」挙動(予想される正常な動きという工学用語)と,「out-of-family」挙動(予想外で懸念される動き)という概念を用い,航空機がout-of-family挙動を示した際に制御喪失に近づいているかを判断することでした.しかし,out-of-familyと見なされる動きは,多くの条件次第で変わり,危険な異常飛行挙動を予測するには複雑な解析手法が必要となります.
Foale氏らは,機械学習ならより人間らしいアプローチが可能だと考えました。曲技飛行パイロットが行うように,危険な状況を識別するニューラルネットワークを訓練し,しかもはるかに速く,操縦士にどの修正行動を取るべきかを音声で指示できるのです。たった数秒の余裕が,操縦士に事故を防ぐための十分な時間を与える可能性があります.
Foale氏の飛行機の翼にRaspberry Piとセンサーを取り付け,さまざまな典型的な状況を再現しながら,一連の飛行からデータを記録しました.「通常のin-family状態で飛行しながら,その時のパラメータを計測して記録しよう.次に失速を起こし,失速に近づくと,計測しているすべてのパラメータがどう変化するか見てみよう.失速の瞬間をout-of-familyとしてマークしよう.」
その飛行データをもとに,彼らは何千ものルールをまとめた「スーパーリスト」を作成し,パイロットがどのout-of-family状況でどのような行動を取るべきかを示しました.そのリストをWolfram言語の関数Classifyに入力すると,「数秒のうちにClassifyはすべてのルールを学習したと宣言しました.機械学習は関連する工学的知識を理解する必要はなく,ルールの変化があることだけを認識すればよいのです.」
Classifyは組込みの訓練方法を使用するため,ユーザーが用意するのはパラメータとデータだけです.このスピードのおかげで,チームは1か月足らずで制御喪失予測システムのプロトタイプを完成させることができました.
「そのニューラルネットワークのアルゴリズムには,ちょっとした魔法がかかってるんですよ...」
SPGは,2017年のEAA Founder's Innovation Prizeコンペティションで銅メダルを受賞しました.それ以降,チームはトレーニングデータの生成を自動化することで,システムの改良に取り組んでいます.
チームの新しいプロセスは,まずFindClustersを使って,大量のin-family飛行データを特定し除去することから始まります.この削減済みデータ集合を再びFindClustersにかけることで,チームはout-of-familyの挙動における明確なグループを識別します.その後,個々のデータ点をすべて分類するのではなく,各クラスタに対して適切な操縦行動を割り当てることができるようになります.
トレーニング時間を数日から数時間へと短縮できるだけでなく,この改良されたプロセスにより,通常飛行と制御喪失の境界線をより正確に定義できるようになりました.これにより,予測の速度と精度が大幅に向上し,SPGによる誤検出の数も削減されます.
次のステップとして,チームは時系列インデックス付きのトレーニングデータを活用し,out-of-family挙動の初期兆候をより正確に検出する方法を検討しています.
Foale氏は,SPGをこれほど迅速かつ効果的に開発できたのは,Wolfram言語の強力な機械学習機能のおかげだと述べています.アイデアの着想からプロトタイプ作成,最終的な実装に至るまでの間で,ソフトウェアの部分が最もスムーズでした.