WOLFRAM

アカデミー賞受賞の視覚効果の作成はMathematicaとWolfram言語を使うことから始まった

天体物理学者/映画「インターステラー」コンサルタント,キップ・ソーン氏

「Mathematicaは私がこの25年使ってきた中で,最高の計算ツールです.」

物理学者であり,「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー作家でもあり,カリフォルニア工科大学の名誉教授でもあるキップ・ソーン氏は,氏が携わった映画「インターステラー」を介して,ファンの科学への情熱に火をつけました.このSFアドベンチャーは人類の生存をかけてワームホールを旅する探検隊の物語であり,2015年のアカデミー賞視覚効果賞を受賞しました.その驚異的な特殊効果の一部はもともとWolframテクノロジーを用いて作成されたものです.

この映画は,ソーン氏とプロデューサーのリンダ・オブスト氏が共同執筆した脚本から生まれ,監督のクリストファー・ノーラン氏,脚本家のジョナサン・ノーラン氏,作曲家のハンス・ジマー氏,そしてDouble Negative社の視覚効果チームによってハリウッドの大ヒット作になりました.チームは,背景に重力レンズ効果を受けた星の場があるブラックホール画像の作成を含め,数々の課題に直面しました.ソーン氏の解決策は,Mathematicaの基盤となるWolfram言語でプログラミングを始めることでした.「方程式を書き出し,Mathematicaで数値積分してからImageTransformation関数を使って画像を構築することで,その方程式を検証しました.」とソーン氏は言います.

チームはまた,ブラックホールの周囲に降着円盤を置き,IMAXカメラでブラックホールがどのように見えるか(光線がブラックホールの歪んだ時空で曲がる様子)を計算し,ワームホール付近の光の伝播をモデル化する必要がありました.Mathematicaの数値積分機能とImageTransformation関数により,ソーン氏は自身の方程式が正しい結果を生み出していることを確かめることができました.「Mathematicaは,方程式が正しいかどうかを確認し,Double Negativeの視覚効果チームに最初の画像を提供するための手段でした.」興行的な成功に加え,ソーン氏の革新的なアプローチは「American Journal of Physics」誌と「Classical and Quantum Gravity」誌への論文掲載につながりました。氏の論文で紹介された可視化技術は,将来の映画や研究プロジェクトに採用されることが期待されています.

ソーン氏とMathematicaとの関わりは「インターステラー」にとどまりません.ソーン氏は仕事を始めたばかりの頃は,プログラミングはすべてFortranで行っていましたが,Mathematicaが登場するとすぐにMathematicaに切り替えました.「Mathematicaはすべてを変えてくれ,私はFortranをほとんど使わなくなりました」とソーン氏は言います.1990年代にはMathematicaは氏にとって,数値計算や操作を行うための頼りになるツールになりました.また,著書「The Science of Interstellar」の多くの図解の作成にもMathematicaを使用しました.一般読者向けに書かれたこの本には,Mathematicaを使って作成された50点以上の図解が掲載されています.この本は「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーリストに5週間ランクインし,映画ファンの科学と物理学への関心を高めました.

「数値計算や代数・微積分を多用する計算が必要なときはいつでもMathematicaを使います.机の上に常備している標準的なツールです」とソーン氏は語ります.氏はまた,2016年7月に刊行予定の「Modern Classical Physics」に掲載される多くの図解の作成や,ブラックホール衝突シミュレーションを行う物理学者チームとの継続的な共同研究等,自身の研究の多くにMathematicaを活用しています.数式計算と数値計算のどちらを行うときでも,ソーン氏はMathematicaによってより多くの時間を全体像に集中するために使うことができるのです.「Mathematicaはとても使いやすく,信頼性の高い結果を素早く提供してくれます」と氏は述べています.

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