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航空機のエンジン故障

欠陥エンジン,フラップの故障,制御理論の不具合等の障害が発生した場合,航空機はどのように動作するのでしょうか.この例ではエンジン故障の後のホーカー・シドレー航空機の反応をモデル化しシミュレーションを作成します.

航空機のモデル

ホーカー・シドレーHS-121トライデント3Bの組込みモデルを使います.これは基準軌道を辿る自動操縦装置に接続されています.トライデント3Bは,スロットル要求の閾値を超えると推力を発生させる追加の小型ブースターエンジンを備えた珍しい設計になっています.約35分後航空機の左エンジンが故障します.

ホーカー・シドレーHS-121トライデント3Bの模型を使う.胴体にターボファンエンジン2基を搭載し,垂直尾翼にターボファンエンジンとブースターターボジェットエンジンを搭載している.

エンジン故障後の縦方向運動に対する制御応答

35分後に左エンジンが故障すると,残りのエンジンはすべてパワー全開になります.しかし,航空機は巡航高度で所定の速度を維持するのに十分な推力が提供できず減速してしまいます.

上のプロットは速度と高度を示す.左エンジンが故障した後,残りのエンジンが全てパワー全開であっても速度は低下する.中央のプロットは右エンジンと左エンジンのスロットル位置を示す.最後のプロットはテールエンジンとブースターエンジンのスロットル位置を示す.

エンジン故障後の横方向運動に対する制御応答

上のプロットは,自動操縦装置が補助翼と方向舵の両方を適用し,生成されたヨーモーメント(左エンジンが故障した直後の差動推力による)を補正し始める様子を示しています.シミュレーションの後半で航空機が降下して減速すると(残りのエンジンで安定した水平飛行を維持できるように),補助翼と方向舵の両方がまだ偏向しており,航空機がまっすぐに飛行できるように小さなロール角で飛行していることも分かります.

上のプロットは補助翼と方向舵の偏向を示している.差動推力によるヨーモーメントは,補助翼と方向舵を偏向させることで補正される.中央のプロットは自動操縦装置に与えられた基準トラック角度と実際のトラック角度を示す.航空機は左エンジンの故障後,差動推力で直進することも旋回することもできる.最後のプロットは機体の x 軸周りのロール角度を示す.

Aircraftライブラリを使ったエンジン故障シナリオのモデル化とシミュレーション