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肝機能を推定する:モデルベースのアプローチ

近年肝機能を診断する非侵襲的方法として,MRI(磁気共鳴画像)検査で肝臓専用の造影剤を用いるようになってきました.ここでは,体内の各部における造影剤の分布と伝達速度を記述する薬物動態モデルを作成します.その後MRIデータを使ってモデルを調整し,健康な人とステージ4の肝線維症を患っている人の量的差異を調べます.

生物学的コンパートメントモデルを作成する

造影剤の薬物動態を示す,カスタム設計されたコンポーネントを持つコンパートメントモデルを作成します.

モンテカルロシミュレーションを実行する

Mathematicaを使って,肝臓に摂取された造影剤について健康な人と患者のパラメータに対応する確率分布を定義します.

造影剤の流れを動的に可視化する

動的ダイアグラムを使って,異なる区画間を流れる造影剤の相対量を可視化します.

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コンパートメント間で異なる伝達速度を示す,最適化されたモデルパラメータは,モデルをMRIデータにフィットすることで得られる.
この確率分布から,造影剤の肝臓への摂取率は,肝線維症を患う人の方が低いことが分かる.さらに,造影剤が血漿に戻される速度は,肝線維症を患う人の方が幾分高い.
上のプロットは,2つの母集団の複数のシミュレーションから得られた,平均と標準偏差の他,個々の軌道を示している.検査において,肝線維症患者の肝臓内の造影剤濃度の方が有意に低い.
動的ダイアグラムは,モデルの力学を可視化するのに便利な機能である.区画間の赤い矢印の向きと太さが変化し,造影剤が現在どちら向きにどれだけの量流れているかを示す.また,肝線維症患者の肝臓への造影剤の流量の方が低いことも見て取れる.

シミュレーションをプログラムで制御する

WSMSimulate を使うと,健康な人と患者の母集団からの複数のパラメータサンプルのシミュレーションを実行し,肝臓内の造影剤濃度を比較することができます.

M. F. Forsgren, L. Dahlqvist, N. Dahlström, et al., "Physiologically Realistic and Validated Mathematical Liver Model Revels Hepatobiliary Transfer Rates for Gd-EOB-DTPA Using Human DCE-MRI Data," PLOS ONE [online], 9(4), 2014 e95700.